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森 悠一郎*; 鍵 裕之*; 青木 勝敏*; 高野 将大*; 柿澤 翔*; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*
Earth and Planetary Science Letters, 634, p.118673_1 - 118673_8, 2024/05
水素による鉄の体積膨張に対するケイ素の効果を調べるため、高圧高温下でのhcp-FeSiの中性子回折実験とX線回折実験を行った。中性子回折実験は重水素化hcp-FeSiに対して13.5GPa, 900K及び12.1GPa, 300Kで行い、得られたプロファイルからリートベルト解析を用いて水素占有率を決定した。hcp-Fe-SiのP-V-T状態方程式を組み合わせることにより、hcp-FeSiの水素による体積膨張が純粋なhcp鉄の体積膨張よりも10%大きいことを示した。得られた値を用いて、内核の密度欠損を再現できる水素量を見積もったところ、シリコンの影響がない場合に比べて50%減少した。hcp-FeSiで内核の密度欠損を再現した場合、内核と外核で可能な水素量xはそれぞれ0.07と0.12-0.15と計算された。
山本 悠介*; 渡邊 隆広; 丹羽 正和; 島田 耕史
JAEA-Testing 2023-003, 67 Pages, 2024/02
東濃地科学センター土岐地球年代学研究所では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発の一環として、地質環境の長期安定性に関する研究を進めている。一般に将来の自然現象に伴う地質環境の変化の予測・評価は、自然現象に関する過去の記録や現在の状況に関する調査結果に基づき行われる。岩石試料等の水素及び酸素の安定同位体比(D、O)は試料に含まれる水の供給源や混合過程等に関する情報が得られるため、過去に発生した自然現象を明らかにする上で重要な基礎データの一つとなる。東濃地科学センターでは、岩石試料等のD及びOを把握するため熱分解型元素分析装置(TC-EA)及び安定同位体比質量分析装置(IRMS)を組み合わせたTC-EA/IRMSによる分析手法を整備した。本稿ではTC-EA/IRMSを用いた岩石試料等のD及びOの分析手法を作業手順書として示すとともに、標準試料を用いた補正式の評価、標準試料の繰り返し測定による分析精度の評価及び岩石試料等を用いた試験測定結果の一例について報告する。
大澤 英昭
技術士"ちゅうぶ", (12), p.34 - 41, 2023/09
日本原子力研究開発機構東濃地科学センター土岐地球年代学研究所の現況を紹介する。
小池 朱里*; 中島 理紗子*; 根本 将矢*; 堺 公明*; 堂田 哲広; 田中 正暁
Proceedings of 12th Japan-Korea Symposium on Nuclear Thermal Hydraulics and Safety (NTHAS12) (Internet), 4 Pages, 2022/10
地球温暖化により、今後異常降雪による降雪量が増大する可能性がある。地球温暖化が炉心損傷要因である炉心出口温度の制限温度超過確率に与える影響を評価するため、地球温暖化を考慮した降雪量のハザード曲線を作成するとともに、ナトリウム冷却高速炉を対象とした動的PRAを行った。その結果、異常降雪時の降雪量は地球温暖化により増加し、制限温度超過確率が高くなることが示された。
中島 理紗子*; 小池 朱里*; 堺 公明*; 堂田 哲広; 田中 正暁
Proceedings of 29th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE 29) (Internet), 6 Pages, 2022/08
ナトリウム冷却高速炉の外部ハザードに対する定量的リスク評価手法の構築の一環として、連続マルコフ過程モンテカルロ法(CMMC法)を用いた動的PRA解析を行い、地球温暖化が炉心損傷要因である制限温度超過確率に与える影響を評価した。地球温暖化に伴って、異常降雪時の降雪量が増大する可能性があることから、地球温暖化を考慮した降雪量のハザード曲線を作成した。解析の結果から、地球温暖化による降雪量の増加により、炉心制限温度を超過する可能性が高くなることが示された。
服部 高典
油空圧技術, 61(7), p.29 - 35, 2022/07
油圧技術の応用例として、6軸型マルチアンビルプレス「圧姫」とそれを擁するJ-PARC超高圧中性子回折装置PLANET、そこで行われた地球中心核の水素に関する研究を紹介する。
田中 万也; 山崎 信哉*
地球化学, 55(4), p.93 - 95, 2021/12
福島第一原子力発電所事故(福島原発事故)から10年が経過した。本特集号では、地球化学に関連する様々な研究分野からの福島原発事故由来放射性核種の環境動態に関する総説論文をとりまとめた。本特集号を通して、様々な研究分野が放射性核種の環境動態の理解向上に貢献していることが分かる。
高井 静霞; 島田 太郎; 武田 聖司; 小池 克明*
情報地質, 32(3), P. 95, 2021/09
GEOINFORUM-2021における発表「地下水流動を考慮した地球統計学的手法による汚染濃度分布の推定」が評価され、2021年度日本情報地質学会奨励賞を受賞した。今回の受賞に関する所感を同部会誌に寄稿する。
飯塚 理子*; 後藤 弘匡*; 市東 力*; 福山 鴻*; 森 悠一郎*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; 舟越 賢一*; 鍵 裕之*
Scientific Reports (Internet), 11(1), p.12632_1 - 12632_10, 2021/06
被引用回数:3 パーセンタイル:30.98(Multidisciplinary Sciences)FeNi合金からなる地球核は、H, C, O, Si, Sなどの軽元素を含んでいると考えられている。その中でHは、宇宙に最も存在する元素であり、最も有望な候補である。これまでの我々の中性子回折実験から、鉄-水系において、水素が他の元素より優先的に鉄に取り込まれることが分かっている。今回、初期地球の組成で水を含んだ鉄-ケイ酸塩系において、Sが及ぼす影響を調べた。その結果、一連の鉄の相転移、含水ケイ酸塩の脱水酸基およびカンラン石・輝石の形成を観察した。またFeの共存相としてFeSが現れた。Hがいる条件でもFeSの格子体積が一定であることから、FeSに水素は入らず、FeSはむしろFeの水素化を阻害することがわかった。高温高圧下から回収された試料を観察すると、FeにはHとSが入っており、HおよびSはFe(H)-FeS系の融点を下げる効果があることが分かった。一方回収試料には、C, O, Siなどの他の軽元素は含まれていないため、地球核形成時には、まずFeHおよびFeSができ、その後さらに高温高圧下でFeHxやFeSが融解した後でないと、それらは核に取り込まれないことが分かった。
國分 陽子
ISEE Newsletter, 9, P. 4, 2020/01
日本原子力研究開発機構東濃地科学センター土岐地球年代学研究所では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発のうち、地質環境の長期安定性に関する研究として地震や火山,隆起侵食,海水準変動等の自然現象の研究を行っている。この研究では、これら様々な自然現象について数万年から数百万年の評価が求められていることから、当研究所では、様々な自然現象の幅広い年代範囲を網羅するように、複数の年代測定技術の開発に取り組んでいる。これらの技術開発については、名古屋大学宇宙地球環境研究所との研究協力協定のもと、両者が有する加速器質量分析装置や電子プローブマイクロアナライザーに関する情報交換や技術供与を行うとともに、地球科学分野における共同研究も行っている。
尾上 博則; 小坂 寛*; 松岡 稔幸; 小松 哲也; 竹内 竜史; 岩月 輝希; 安江 健一
原子力バックエンド研究(CD-ROM), 26(1), p.3 - 14, 2019/06
高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価は、処分施設閉鎖後、数万年以上に及ぶ時間スケールを対象として実施される。そのため、長期的な自然現象による影響を考慮した地下水の流速や移行時間といった地下水流動状態の長期変動性の評価技術の整備は重要な技術開発課題である。本研究では、長期的な自然現象のうち隆起・侵食による地形変化や気候変動に着目し、それらに対する地下水流動状態の変動性を、複数の定常解析結果に基づく変動係数で評価可能な手法を構築した。岐阜県東濃地域を事例とした評価手法の適用性検討の結果、過去100万年間の地形変化や涵養量の変化による影響を受けにくい地下水の滞留域を三次元的な空間分布として推定した。本評価手法を適用することで、地層処分事業の評価対象領域において、地形変化や気候変動に対する地下水流動状態の変動性が小さい領域を定量的かつ空間的に明示することができる。さらに、岐阜県東濃地域における事例検討結果を踏まえて、外挿法を用いた地下水流動状態の変動性の将来予測の基本的な考え方を整理するとともに、将来予測手法の適用可能な時間スケールについて考察した。
石丸 恒存
JAEA-Conf 2018-013, p.13 - 16, 2019/02
日本原子力研究開発機構東濃地科学センターの保有する加速器質量分析装置、JAEA-AMS-TONOが平成29年で20年目を迎えるため、本発表ではこれまでの歩みと現況を紹介する。平成9年3月の導入後、まず炭素-14測定の整備を進め、平成25年度にベリリウム-10測定、平成27年度にはアルミニウム-26測定が可能となっている。また、これらは機構内で利用するだけでなく、原子力機構の「施設供用制度」により、外部からの測定依頼の受け入れも行っている。現在は、さらに測定核種を増やすべく、塩素-36,ヨウ素-129の測定に向けた整備・検討を進めている。これまで装置が稼働できない時期があるなど幾つかの曲折はあったものの、着実に実績を積み重ねることができている。
女澤 徹也; 望月 陽人; 宮川 和也; 笹本 広
JAEA-Data/Code 2018-001, 55 Pages, 2018/03
日本原子力研究開発機構は、北海道幌延町において、深地層の研究施設を活用した地層科学研究および地層処分研究開発を実施している。幌延深地層研究センターでは、地層科学研究の一環として、地下施設内の調査坑道において、岩盤中の地下水の水圧・水質変化の観測を目的として開発された地下水の地球化学モニタリング装置を用い、観測を継続している。本報では、140m調査坑道,250m調査坑道および350m調査坑道に設置された地下水の地球化学モニタリング装置を用い、2017年3月31日(平成28年度末)までに取得した水質(物理化学パラメータ)の測定結果をとりまとめた。
飯塚 理子*; 八木 健彦*; 後藤 弘匡*; 奥地 拓生*; 服部 高典; 佐野 亜沙美
波紋, 27(3), p.104 - 108, 2017/08
水素は太陽系で最も豊富にある元素で、地球核に含まれる軽元素の最も有力な候補である。しかしながら水素は、X線では見えないこと、常圧下では鉄から簡単に抜け出てしまうことから、その溶解量やプロセスは未知である。本研究では、J-PARCのPLANETを用い、鉄-含水鉱物系の高温高圧下中性子その場観察実験を行った。その結果、約4GPaで含水鉱物の分解によって生じた水が鉄と反応し鉄酸化物と鉄水素化物を生成することを確認した。この時生じた鉄水素化物は、さらに温度を挙げても安定であった。この反応は1000Kで起きたが、その他の物質に関して融解は起きなかった。このことは、地球形成期初期に水素が、他の軽元素に先んじて鉄に溶けることを示唆している。
飯塚 理子*; 八木 健彦*; 後藤 弘匡*; 奥地 拓生*; 服部 高典; 佐野 亜沙美
Nature Communications (Internet), 8, p.14096_1 - 14096_7, 2017/01
被引用回数:44 パーセンタイル:88.44(Multidisciplinary Sciences)地球の核の密度は純鉄の密度よりも低く、核の中の軽い元素は長年の問題である。水素は太陽系内で最も豊富な元素であり、したがって重要な候補の1つである。しかし、これまで水素の鉄への溶解過程は不明であった。ここでは、高圧高温その場中性子回折実験を行い、含水鉱物の混合物が加熱されると、含水鉱物が脱水された直後に鉄が水素化されることを明らかにしている。これは、地球の進化の初期に、蓄積された原始物質が熱くなったときに、他の物質が溶けこむ前に水素の鉄への溶解が起こったことを意味する。これは、水素が地球進化の過程で鉄に溶解した最初の軽元素であり、その後のプロセスにおいて他の軽元素の挙動に影響を及ぼす可能性があることを示唆している。
富岡 尚敬*; 奥地 拓生*; Purevjav, N.*; 阿部 淳*; Harjo, S.
Physics and Chemistry of Minerals, 43(4), p.267 - 275, 2016/04
被引用回数:8 パーセンタイル:28.53(Materials Science, Multidisciplinary)Hydrogen site positions and occupancy in the crystal structure of dense hydrous magnesium silicate (DHMS) phase E were determined for the first time by pulsed neutron powder diffraction. A fully deuterated pure phase E powder sample, which had space group m and lattice parameters of = 2.97065(8) and = 13.9033(4) , was synthesized at 15 GPa and 1100C. Through quantitative evaluation of refined structure parameters obtained with sufficient spatial resolution and very high signal-to-background ratio, we conclude that the O-D dipoles in the refined phase E structure are tilted by 24 from the direction normal to the layers of edge-shared MgO octahedra (octahedral layers). The tilted dipole structure of phase E is in remarkable contrast to that of brucite, Mg(OH), which has dipoles exactly normal to the octahedral layer.
Walker, C.; 須藤 俊吉; 小田 治恵; 三原 守弘; 本田 明
Cement and Concrete Research, 79, p.1 - 30, 2016/01
被引用回数:69 パーセンタイル:90.42(Construction & Building Technology)セメント系材料の変質挙動を定量的に予測するためには、カルシウムシリケート水和物ゲル(C-S-H)の溶解挙動をモデル化することが重要である。本研究では、C-S-Hゲルの溶解データの実験値について、既往の文献値とCa/Si比0.20.83における新規データとを収集・抽出した。これらのデータを用いて、水溶液中における二組の二元系非理想固溶体(SSAS)とみなし、離散的なCa/Si比を有する固相(DSP)として設定したC-S-Hゲルの溶解モデルを構築した。本研究で構築したDSP型のC-S-Hゲルの溶解モデルの特長は、Ca/Si比2.70でのC-S-Hゲルの溶解データ(pH値、Ca濃度及びSi濃度)の再現性が良好であること、Ca/Si比1.65以上ではポルトランダイトを含むこと、Ca/Si比0.85での調和溶解を再現すること、Ca/Si比0.55以下でアモルファスシリカを含むことである。Ca/Si比0.55以下でアモルファスシリカを含むことは、本研究におけるIR分析によって確認された。
小池 克明*; 久保 大樹*; Liu, C.*; Masoud, A.*; 天野 健治; 栗原 新*; 松岡 稔幸; Lanyon, B.*
Tectonophysics, 660, p.1 - 16, 2015/10
被引用回数:27 パーセンタイル:66.63(Geochemistry & Geophysics)岩盤中の割れ目分布と透水性の関連性を把握することを目的に、東濃地域における深層ボーリング調査と立坑の壁面観察データを用いて、地球統計学的手法(GEOFRAC)による3次元割れ目分布モデルを構築するとともに、モデル化された割れ目分布と水理特性の関係について検討を行った。GEOFRACで構築した割れ目分布モデルは、使用した割れ目データの分布とよい一致を示した。また、モデル化された割れ目のうち、連続性のよい割れ目は既知の断層の近傍に分布している傾向にあることを把握した。さらに、GEOFRACで構築した割れ目分布モデルと透水係数分布モデルから、透水性に強い影響を及ぼす割れ目の規模や方向性を確認した。
岩月 輝希; 萩原 大樹; 大森 一秋; 宗本 隆志; 尾上 博則
Environmental Earth Sciences, 74(4), p.3041 - 3057, 2015/08
被引用回数:18 パーセンタイル:58.36(Environmental Sciences)岐阜県瑞浪市の超深地層研究所において、深度500mまでの坑道掘削及び維持管理時の地下水の水理・化学変化の観測を行った。その結果、水位低下や深部地下水の湧昇に伴う地下水の水質変化とそのプロセスを把握することができた。また、観測結果から大規模地下施設を結晶質岩に建設する時の留意点を整理することができた。
鈴木 崇史; 北村 敏勝; 甲 昭二*; 外川 織彦; 天野 光
Journal of Nuclear Science and Technology, 43(11), p.1431 - 1435, 2006/11
被引用回数:13 パーセンタイル:65.77(Nuclear Science & Technology)日本原子力研究開発機構の加速器質量分析装置にヨウ素ラインを設置した。このヨウ素ラインは高分解能の分析電磁石及び高エネルギー分解能の静電ディフレクターによって妨害イオンを除去するシステムになっている。ヨウ素ラインを設置後、さまざまなトラブルに見舞われたが修理,改善を行った結果、0.53%の再現性と1.1%の精度に達した。10から10までのヨウ素同位体比を持つ標準試料を測定した結果、このヨウ素ラインはIを精度よく測定できることを実証した。低レベルのIを測定する際、メモリー効果が観測されたので、検出限界を再度見積もった。検出限界値はヨウ素同位体比で10レベルであった。これらの結果から判断するとこのヨウ素ラインは原子力施設のモニタリングだけでなく年代測定やトレーサー利用といった地球環境科学分野に応用できる可能性を有している。